ダブルマテリアリティとは — 頻出するこの言葉を5分で
「財務」と「インパクト」の二方向で重要性を判断する考え方。ISSBとCSRDで扱いが分かれる。
要点
- ダブルマテリアリティは、サステナビリティ課題の重要性を「企業への財務的影響」と「企業が環境・社会に与える影響」の二方向から判断する考え方。
- EUのCSRD/ESRSはダブルマテリアリティを採用し、ISSB(IFRS S1/S2)は投資家向けの財務マテリアリティ(シングル)を基本とする点が実務上の分岐になる。
- 両基準の対象になる企業は、開示範囲の広いダブルマテリアリティを起点に設計し、財務マテリアリティを内包させると重複作業を抑えやすい。
二つの「重要性」を分けて考える
マテリアリティ(重要性)とは、どのサステナビリティ課題を開示・対応の対象とするかを決める判断基準を指す。ダブルマテリアリティは、この判断を二つの方向から行う考え方である。
一つは財務マテリアリティ。気候変動や人権リスクなどの外部環境が、企業の業績・キャッシュフロー・企業価値にどう影響するかを見る。投資家の意思決定に効く情報かどうか、という視点だ。
もう一つはインパクト・マテリアリティ。企業の事業活動が、環境や社会にどのような影響(正・負)を与えるかを見る。こちらは投資家だけでなく、従業員・取引先・地域社会など幅広いステークホルダーの視点に立つ。
この二方向のいずれかで重要と判断されれば開示対象になる、というのがダブルマテリアリティの立て付けである。
ISSBとCSRDで扱いが分かれる
実務で押さえるべきは、主要な開示基準でマテリアリティの立て方が異なる点だ。
EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)と、その下で適用される欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)は、ダブルマテリアリティを明確に採用している。一方、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表したIFRS S1/S2は、投資家向けの財務情報を軸とするため、財務マテリアリティ(いわゆるシングルマテリアリティ)を基本としている。
日本のSSBJ基準はISSBに整合するため、制度開示の軸は財務マテリアリティに置かれる。ただし、EUに一定の事業を持つ日本企業はCSRDの対象にもなり得るため、両方の考え方を理解しておく必要がある。
So What(実務含意)
CSRDとISSB(SSBJ)の双方が視野に入る企業は、開示範囲の広いダブルマテリアリティを起点に重要課題を洗い出し、その中に財務マテリアリティを内包させる設計にすると、二重の分析作業を避けやすい。まずは自社がどちらの基準の対象になるかを確認することが出発点になる。
出典(一次ソース)
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